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擬似環境の向こう側

(旧brighthelmerの日記) 学問や政治、コミュニケーションに関する思いつきを記録しているブログです。堅苦しい話が苦手な人には雑想カテゴリーの記事がおすすめです。

努力を「語る」流儀

学歴の話はなぜ荒れるのか 学歴というのはとても荒れやすいテーマだ。 ほとんどの人が学校教育を経て成人する現代社会において、それはやむを得ない部分もある。それぞれに様々な経験があり、それらから導き出された何かしらの考えがある。自分と違う意見を…

犯罪報道の二つの方向性

多摩川沿いで中学生が殺害されるという痛ましい事件が起きた。 事件の詳細についてはまだ部外者が何も語れる段階にはない。にもかかわらず、すでに少年法の改正を求める声が上がっている。容疑者が未成年である場合に氏名などの報道を禁じている規定の改正が…

移民の受け入れと異文化の共生

アパルトヘイトとエスニック・コミュニティ 『産経新聞』に曽野綾子氏が掲載したコラムをめぐって、大きな騒ぎが起きている。曽野氏がアパルトヘイト肯定とも解釈できる主張を行なったからだ。 本人は誤解だとしているようだが、このコラムは高齢者介護のた…

紛争地域の報道とメディアの責任

人質事件に端を発し、紛争地域での取材活動が大きな問題となっている。 1月26日には『朝日新聞』のイスタンブール支局長がシリアのアレッポに入り、2月1日には現地からの記事が同紙に掲載された。『毎日新聞』は1月31日にその事実を報じ、『読売新聞』や『産…

二つの自己責任論(再録)

(以前(2013年9月)に書いたエントリですが、時期に適ったテーマである気がするので再録します。ただし文末に追記があります。) 日本では自動車に乗るさい、シートベルトの着用を義務づけられている。近年では後部座席に座るさいにも義務づけられるように…

「表現の自由」の終焉?

「表現の自由」=「強者だけの自由」? フランスでの新聞社襲撃に端を発する一連のテロ事件。「表現の自由」を脅かす深刻な事態であることは明らかであり、襲撃犯が厳しく罪に問われるべきことは言うまでもない。 その一方で、日本語でのツイートを見ている…

牛丼福祉論再訪

ちょうど去年のいまごろ「牛丼は福祉か」という話題が盛り上がったことがあった。そのきっかけになったのが、若手論客である古市憲寿さんが対談で語った次のような言葉だ。 【古市】なるほど、すき家はいいですよね。牛丼やファストフードのチェーンは、じつ…

ネットでのヘイトスピーチに関する取材手法について

在日コリアンの方々に罵詈雑言を投げつけていた男性に関する記事が話題になっている。これだ(記事タイトルを一部改変)。 ネットでヘイトスピーチを垂れ流し続ける中年ネトウヨの正体【前編】 ネットでヘイトスピーチを垂れ流し続ける中年ネトウヨの正体【…

マスメディア批判の中心

マスメディアの報道は昔から繰り返し批判されてきた。 誤報、事実の歪曲、閉鎖的な記者クラブ、政府の発表をただ流すだけの発表ジャーナリズム、センセーショナリズム、取材対象との癒着、他社よりも少し早いだけの無意味なスクープ合戦、調査報道の欠如など…

「気持ちよさ」の代償

『毎日』と『産経』のすれ違い 先日、『毎日新聞』に「『気持ちいい』は気味悪い」というコラムが掲載された。『産経新聞』を読むと気持ちが良いという声に疑問を呈する内容だ。自分と同じような意見だけを読んでいければ確かに気持ちが良いかもしれない。し…

吉田証言はどこまで国際世論を形成したか

(ツイートのまとめに加筆) 吉田証言の影響力を検証するには 慰安婦の「強制連行」に関する吉田清治氏の証言とそれに関する報道はどこまで国際世論を形成したのか。いきなりで恐縮だが、ぼくには分からない。分からないのだが、これに関して思うところを少…

新聞記者とツイッター

池上彰さんのコラムが『朝日新聞』にいったんは掲載を拒否されたことをめぐって、同紙の記者の多くが社の方針にツイッター上で反対を表明したことが話題を呼んだ。 ぼく自身はこの動きを好意的に見ていたのだが、批判も少なくない。やらせじゃないのか、自分…

朝日新聞問題に寄せて(追記あり)

慰安婦検証報道の問題点 『朝日新聞』が大変なことになっている。 8月5日、6日に行われた同紙の慰安婦報道の訂正に端を発して、他の新聞や週刊誌が激しく『朝日』を批判している。また、今年5月に『朝日』が報道した福島原発事故に関する「吉田調書」の報道…

批判の流儀

先日、都議会での野次問題に関連して、注目を集めたエントリがある。どこかの大学の教員が授業の枕として話した内容の概要だという。 思慮深いみなさんの事ですから間違える事は無いと思いますが、念のために助言しておきます。この件でネット上で当事者を批…

「政治的なもの」を飼い慣らす(2)

(前回)「政治的なもの」を飼い慣らす(1) - 擬似環境の向こう側 ご存知の人も多いと思うが、「出羽の守」という言葉がある。 「イギリスでは…」「アメリカでは…」というように外国がいかに優れているかを強調する。返す刀で日本がいかに駄目かをこき下ろ…

「政治的なもの」を飼い慣らす(1)

先日、ネットで舞の海秀平氏の「排外」発言が話題になったことがあった。発端になったのは『週刊金曜日』のこの報道。舞の海氏の発言として、以下のように伝えている。 「外国人力士が強くなり過ぎ、相撲を見なくなる人が多くなった。NHK解説では言えない…

マイルドヤンキーの近代化

1950年代から60年代にかけて、米国の社会科学では近代化論なるものが隆盛を誇っていた。 当時、植民地支配から次々と独立を遂げていった国々をいかにすれば欧米のような近代国家へと成長させることができるのかが近代化論のテーマだった。もちろん、その背後…

子どもを産まないというモラル

<ずっと前に別のところに書いた文章に加筆、修正> 「だいじょうぶよ」というのが、その頃の妻の口癖だった。つづく言葉は、「なんとかなるって」。そう言って、いつも疲れてはいるけれど屈託のない笑みを浮かべるのだった。(中略)だが、いまの妻は、めっ…

分析の封殺

再帰的な被告人 えらい文章を読んでしまった。『黒子のバスケ』脅迫事件の被告人意見陳述である。ネットで話題になったので、読んだ人も多いだろう。「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人意見陳述全文公開 「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人意見陳述全文公開2 …

「ドロドロしたもの」の政治学

かつて田中角栄は「政治は欲望の分配」と述べたのだという。 政治家には様々な人びとが利権を求めて群がる。それをどう調整し、多くの人びとを満足させるかに政治家の手腕はかかっているというわけだ。利益の調整を得意とした田中らしい言葉だと言える。 も…

『原発ホワイトアウト』

先日、日本から届いた若杉洌『原発ホワイトアウト』(講談社、2013)を読み終えた。現役のキャリア官僚が原発をめぐる政財官の癒着を告発した小説、ということで話題になった。以下はネタバレである。 読後感はよろしくない。原発を早急に再稼働させようとす…

ユダヤ人差別とリップマンの間違い

20世紀のアメリカを代表するジャーナリスト、ウォルター・リップマンはユダヤ系の出自だった。 だが、彼はアメリカのエスタブリッシュメントに加わることに力を注ぎ、自らがユダヤ系の生まれであることにこだわりは見せなかった。むろん、それは個人の生き方…

脱成長と団塊ジュニアの『三丁目の夕日』

時期を逸した話題ではあるが、都知事選に対して細川護煕候補が「脱成長」なるスローガンを掲げて話題になったことがあった。 ネット上ではかなり批判があったが、とりわけ40代以下の世代はあれを見てガックリした人が少なくなかったのではないだろうか。「脱…

ジャーナリズムの精神

NHKの問題をはじめとして、メディアやジャーナリズムのあり方が改めて問われている。ぼく自身はジャーナリストであったことはないし、偉そうに何かを言う資格もない。そこで、20世紀を代表する米国人ジャーナリストであるウォルター・リップマンに登場を願う…

日本の自画像

平和国家としての自画像 主語の大きな話には気をつけなくてはならない。 大した根拠もなく「日本人はこうだ」とか「中国人はああだ」などと語るのは、ほとんどの場合、ステレオタイプの反映にすぎない。日本には1億2千万人以上の人がいるし、中国に至っては1…

「世界最悪の事態」を迎えた人びと

安部首相が現在の日中関係を第一次世界大戦前の英独関係に例えたということが話題になっている。 今年は第一次世界大戦が勃発してからちょうど100年目ということもあり、何かと話題になることも多い。そこで、このエントリでは、当時の人びとが第一次世界大…

「それは私にとって都合が悪い」

多くの人は自分の主張をするさい、何らかの理由づけをする。 なぜそのラーメン屋に行くべきのかと問われれば「美味いから」「店員の女の子が可愛いから」などという答えは自然だろうが、それが「国益に叶う」からだと言われればさすがに引いてしまう人が多い…

グリーン車のツイートはなぜ炎上したか

新年早々、さっそくネットでは炎上事件が起きた。もう沈静化しているとは思うのだが、あえて蒸し返してみたいこの話題。そう、大規模な遅延が発生した新幹線ではグリーン車の空席をお年寄りや子ども連れに解放すべきだというツイートをめぐる炎上事件だ[1]。…

社会のため息

以前、さる研究会に出ていたときの話。その研究会はわりと高齢の「左」系の人で構成されていた。研究会のテーマも自ずとそっちの方向に行くのだが、それよりも気になったのが、結論がしばしば「新自由主義が悪い」「米国が悪い」というところに落ち着いてし…

今年を振り返る

さて、今年もいよいよ終わりである。 去年から始めたこのブログ。去年の投稿数が9本だったのに対して、今年はこれまでで86本。なんでこんなことになったのかと言えば、在外研究に出たおかげで時間的に余裕ができたからでもある。なので、帰国したらこうはい…

戦没者を弔うことの意味について

安部首相の靖国神社参拝が波紋を広げている。 ぼく個人としては止めておけばよかったのにと思っているが、それはとりあえず措く。また、戦没者の弔いにあたって靖国という場は本当にふさわしいのか、政治問題化したのは誰のせいかを論じたいのでもない。そう…

リベラルなナショナリストに勝ち目はあるか

前回のエントリが意外なことに結構多くのブックマークを集めた。ブックマークのなかには「リベラル・ナショナリズム」について言及しているものもある。そこで、このエントリではリベラルなナショナリズムを取り上げてみたい。 …のだが、まずはぼくの個人的…

リベラルのことばが届かない

ネット上では「サヨク」や「リベラル」を嘲笑し、罵倒する言葉に溢れている。 そもそも、誰が「サヨク」で誰が「リベラル」なのか、いまいちはっきりしないのだが、たとえば『朝日新聞』でよく見るような意見の持ち主を指すと考えていいんじゃないかと思う。…

郊外の風景と民主主義

郊外の風景 ぼくは大都市の郊外で育った。いまから何十年も前の話だ。 ちょうどぼくが生まれる直前ぐらいに大規模な集合住宅が建設され、多くの若いファミリーが引っ越してきた。それ以外にも多くの若いファミリーが暮らしており、当然、ぼくと同世代の子ど…

「責任者は責任を取るためにいる」

(ツイートのまとめ+加筆) 責任者は責任を取れる立場にいるのか? 「責任者は責任を取るためにいる」という言葉がある。 これは、責任を取るべき立場にありながら、そこから逃げ出そうとする人を批判する言葉として解釈できる。「責任者はお前だろうが!」…

知識人の消滅

(過去ツイートの再編集) 國分功一郎さんと麻木久仁子さんの対談記事に気になる箇所があった。 (麻木さんの発言)特に学者さん、知識人階級の人たちね。まず最近の知識人は、遠慮してるのか謙遜してるのか知らないけど、自分たちが知識人階級だっていうこ…

プライドとしてのオリエンタリズム

NHKスペシャル“アジアの一等国”の番組内容をめぐって賠償判決が下されたようだ。番組内で名誉毀損、NHKに賠償命令 台湾統治の検証 東京高裁 残念なことに、ぼくはこの番組を見ていない。なので、断片的な情報しかないのだが、この問題は結局のところ「オ…

何がリフレ政策を実現したのか

日銀をめぐるネット論争 ネットではかなり前から「リフレ政策」の是非が語られ、時として論争が発生してきた。なかでも、ぼくにとって印象深いのが、匿名官僚ブロガーであったbewaadさんという人の主張をめぐって2010年ごろに起きた論争だ。 bewaadさんのブ…

「在日」とは、在日の人たちのことではない

今朝の『朝日新聞』に在特会関係の記事が掲載された。そのなかで、反在日デモに参加している女性のことが紹介されている。 韓流ドラマに親しむ「ふつうのOL」だったという。昨年夏、韓国大統領の竹島上陸と天皇謝罪要求に衝撃を受け、ネットで関係記事を検…

ポジティブ・フィードバックの誘惑

「表現の自由」はなぜ必要か 昔、ぼくがまだ大学院生だったころ。大学のゼミで「表現の自由」はなぜ必要なのかを議論したことがあった。 ぼくは「表現の自由」や「言論の自由」は基本的人権の一部であり、それは不可侵だと主張した。しかし、たとえば戦争な…

「悪い変化」は海の向こうからやって来る

当たり前の話だが、社会というものは変化していく。日々の生活や仕事は時代と共に変わっていくし、犯罪が増えたり減ったりする。男性が草食系になったり、女性が肉食系になったりすることもあるかもしれない。少しずつ変わっていくこともあれば、急にガラリ…

申し訳ありませんでした。

先日アップしたエントリに重大なミスが含まれていたので削除した。偏見を助長するようなエントリを書いてしまったことを痛烈に反省している。本当に申し訳ありませんでした。 問題があったのは以下の部分だ。 2012年度の犯罪白書によれば、2011年の一般刑法…

『災害ユートピア』と『ショック・ドクトリン』

ささやかな「災害ユートピア」 今から10年ほど前の話だ。 当時、ぼくは5軒続きの2階建長屋に住んでいた。新築だったので住民は我が家と同様に若い夫婦が多かった。しかし、まだ子どもがいなかったぼくらに近所づきあいなるものは存在しなかった。 あるとき、…

「反日分子」からの挨拶

ジョージ・オーウェルの小説『動物農場』のあとがきには、「英国ファシスト連盟(BUF)」のリーダー、オズワルド・モズリーをめぐる顛末が書かれている(モズリーの主張については、以前、このエントリで紹介した)。第二次世界大戦が勃発すると、英国政府は…

カテゴリーの政治

階級政治の終焉 人間というのは、いろいろなカテゴリーをつくる。民族、人種、身分、階級、ジェンダー、エトセトラエトセトラ。そして、このカテゴリーは政治を動かすうえで重要な役割を果たしてきた。身分制度に基づいて統治をしたり、民族ごとに国家を作っ…

「日本が嫌いなら日本から出て行け」の背後にあるもの

「社会で通用しない」の「社会」とは 以前、大学の同期と飲んでいたときの話。 外資系の企業に転職したばかりの奴の話をみんなで聞いていた。社内での立ち振舞いや給料の査定の話など、なかなかにシビアだ。大学のような浮世離れしたところで勤めているぼく…

1964年のオリンピック

(ツイートに加筆) 言わないと誰も気づかないかもしれないのでいちおう言っておくと、タイトルは村上春樹『1973年のピンボール』からのパクリだ。ちょっとしか合ってねえ。 さて、2020年に東京でオリンピックが開催されることになった。まあ、やることが決…

自由な監視社会

前回のエントリでは「監視社会」について述べた。 ただ、監視社会というと、イコール自由のない社会だと解釈されてしまうことがありうるので、やや意味が強すぎるようにも思う。実際には、監視社会=自由のない社会、ではない。 この点を理解するうえで、前…

炎上と監視社会

9月になり、多くの学校では夏休みが終わった。 この夏を振り返ると、なんというかブログの炎上が多かった。学生が学校に戻り、下らない写真をアップする暇もなくなれば炎上も減っていくかもしれない。 それは措くとして、すでに数多く指摘されているように…

文化輸入のエージェント

いま、イギリスでは(ロンドンでは、のほうが正確かも)日本食ブームだ。 アニメとかマンガについては言うほど人気でもないと思うが、日本食に関してはかなり熱い。以前、回転寿司が流行ったことがあったが、いま熱いのは弁当屋である。日本風の弁当を扱う店…