擬似環境の向こう側

(旧brighthelmerの日記) 学問や政治、コミュニケーションに関する思いつきを記録しているブログです。堅苦しい話が苦手な人には雑想カテゴリーの記事がおすすめです。

雑想

ヒロインはなぜ清楚系か

(ツイートのまとめ) 実家に帰省中、奥さんが本を持ってくるのを忘れたので、ぼくが持っていた小説を貸した。すると、次のような質問がやってきた。 「どうして貴方が愛読する小説の主人公はいつもうじうじ苦悩していて、ヒロインは決まって黒髪の清楚系で…

伊織とアスカ

40歳をとう過ぎたオッサンがこんな話をブログに書くというのはいかがなものだろうか。そう悩みつつも書かずにはいられない。それが今回のエントリである。 『ココロコネクト』というアニメがある。原作はライトノベルでアニメは2012年7月から9月にかけて放送…

「人生の目的」は語らないほうがいい

いまからちょうど20年前、ぼくが大学2年生だったころの話だ。 やっと大学に入学できたという高揚感はとうの昔に冷め、ぼくはいかにも若者らしい悩みを抱えていた。「自分が生きている意味がわからない」というやつだ。 周囲を見渡すと、ぼくよりも何かに秀で…

アジールとしての学校

若い人たちによく見られているアニメ作品には「アジール」が登場することが多い。 アジールというのは、外部から隔絶されていて、そのなかでは外部とは別の秩序が成立している空間のことを指す。アニメ作品における典型的なアジールは部室だ。たとえば、『涼…

フエルテベントゥラ紀行(3)

フエルテベントゥラ紀行(1) フエルテベントゥラ紀行(2) 誰も読んでいないんじゃないかというこの紀行文、なんと前回のエントリにスターが付いた。少なくとも一人は読者がいるわけだ。なので、たとえ読者が少なくともとにかく完結させねばなるまい。 さ…

フエルテベントゥラ紀行(2)

フエルテベントゥラ紀行(1) ブログは「テーマを決めて書け」とよく言われる。そういう意味では、普段、堅苦しい話ばかり書いているこのブログでお気楽な紀行文を書くというのは、コンセプトとして間違っている。間違ってはいるのだが、(1)を書いてしま…

フエルテベントゥラ紀行(1)

子育て中の人間にとって、紀行文は非常に相性が悪い。 なぜかと言えば、むろん子育て中の人間はフットワークがものすごく重いからだ。 たとえば、紀行文と言われて最初にぼくが思い出すのは、沢木耕太郎さんの『深夜特急』だ。香港からロンドンまでという長…

努力の価値は

励ましの言葉にはタイミングが大切だ。タイミングを逸した励ましは毒になる。 うつ病の人に「頑張れ」という励ましは禁句だと言われる。うつ病になるのは責任感が強い人が多く、そんな人に努力を促すことはかえって追い込んでしまうことになるからだという。…

今年を振り返る

さて、今年もいよいよ終わりである。 去年から始めたこのブログ。去年の投稿数が9本だったのに対して、今年はこれまでで86本。なんでこんなことになったのかと言えば、在外研究に出たおかげで時間的に余裕ができたからでもある。なので、帰国したらこうはい…

ロンドンの美味しいもの

気づけば、ロンドンに来てからもう半年以上経った。そこで、この半年でぼくが「美味しい」と思ったもの&店をいくつか紹介したい。たしかにロンドンでは食事でがっかりすることが少なくない。しかし、その一方で美味しいと思えるものもあるにはある。たとえ…

受験RPGの思い出

(昔のツイートのサルベージ+加筆) ぼくが高校3年生のときのことだ。 さすがにそろそろ大学受験の準備をせねば、という状況になった。だが、先日のエントリでも書いたように、当時のぼくは勉強をするための方法がいまいちよくわかっていなかった。机に向…

「階級小説」としてのハリー・ポッター

小説や映画もずっと前に完結したハリー・ポッターについて、なんで今さら書くのか。はっきり言って特に理由はない。あえて言えば、今日読んでた論文に“scrounger”という単語が出てきて、「ああ、これハリポタでも出てきたなあ」と思いだしたというのが最大の…

飲み会と盛り上がり

ずっと昔、ぼくがまだ大学生だったころの話。 ぼくは、あるサークルに入っていた。居心地は良かった。女の子も多く、中学や高校時代には失われていた青春を取りもどしたかのような感覚すらあった。付き合っていたわけではなかったが、初めて女の子と二人で喫…

翻訳の問題

英語での会話を日本語に訳すさい、女性の言葉をどう訳すかはなかなかに難しい問題だ。 よくあるのは、「だわ」とか「なのよ」とか過度に女性的すぎる言葉を使ってしまうというパターンだ。最近では、こういう訳し方は批判されることが少なくない。(たとえば…

ディズニーランド・パリ雑感

メディア研究や社会学では、しばしばディズニーランドが題材になる。空間の意味づけだの、従業員の教育方法だの、とにかくディズニーランドというのは現代社会の縮図というか一側面を非常に明確に映し出していると言われる。 先日、パリのディズニーランドに…

黒歴史、中二病、ブラック企業

多くの人にはあまり語りたくない恥ずかしい過去がある。ネット用語では「黒歴史」と言ったりする(もともとは『∀ガンダム』に由来する言葉だ)。ぼく自身、黒歴史はかなりあって、以前に書いたエントリの話なんて、まさしくぼくの黒歴史中の黒歴史だ(1)。 …

真夏の恋

小学校6年生の夏、ぼくは何度目かの中耳炎になった。知っている人も多いと思うが、中耳炎の治療はけっこう痛い。憂鬱な気持ちで耳鼻科のドアを開けたぼくの目の前に、待合室で順番を待つ天使がいた。 というのは、むろん嘘だ。しかし、ぼくの目の前に大好き…

一人称の呪い

幼児の一人称というのは、多くのばあい、自分の名前である。たとえば、○○ちゃんが「あのね、○○ちゃんね」と自分で言うのがそれにあたる。我が家の長男の一人称もそんな感じで始まった。 幼稚園に入ったあたりからだろうか、その一人称が「ぼく」に変わった。…

13年目のパディントン

昨日、子どもを連れて、ロンドンの観光に出かけた。いくつかの場所をまわり、夕方過ぎにパディントン駅にやってきた。ところが、移動の途中に下の子どもが寝てしまい、ぼくらは駅のベンチでしばらく時間を潰すことにした。30分ぐらいでようやく目を覚ました…

衰える妄想力

大学教員にとっての憂鬱な業務として入試監督を挙げる人は多いんじゃないかと思う。 問題用紙や解答用紙を配布し、受験者のチェックなどを済ませると、もうやることがない。論文を読んだり、仕事をしたりするのはむろんご法度。居眠りなぞ論外。かといって、…

ハーバーマスの思い出

昔、ぼくが大学院生としてイギリスに留学していたときのことだ。 ぼくが所属していた大学院には、いろいろな国から留学生が来ており、当時は特に台湾や韓国から来ていた学生が多かった。彼らとは同じ極東アジア系ということもあり、パーティーなどでもよく話…

『妖精作戦』から始まる高校生活

前回は(も)かなり固い話だったので、今回は軽い話で。 ネットで話題になっていたこの文章を読んだ。男女の違いはあるものの、「たまに10代の頃を思い出すと私は、本気で鬱になったり『うわああああああ!!!!』って頭を抱えたくなる」という部分には深く…

記憶の上書き

「あんたら、もうお風呂には入ったんか?」 母が優しい声で、お風呂から上がったばかりのぼくの子どもたちに尋ねる。ついさっき、上の娘がお風呂に入るのを嫌がってさんざんごねていたのも、下の息子が脱衣室から素っ裸で飛び出してきたのも、母はしっかりと…

アカポスとしてのホグワーツ

以下は、ハリー・ポッターについての文章である。なので、ハリポタに興味のない人が読んでもまったく面白くないであろうし、興味があってもたいして面白くないことは明言しておく。 さて、問題はダンブルドア校長である。偉大な魔法使いとして名高いダンブル…

卒業式にて

まずはご卒業おめでとうございます。 みなさんもご存知の通り、昨年の卒業式は震災の影響で中止でした。なので、今年は二年ぶりの卒業式ということになります。そこで、やはり震災について少しお話しておこうかと思います。 去年、震災があって、交通網も混…