擬似環境の向こう側

(旧brighthelmerの日記) 学問や政治、コミュニケーションに関する思いつきを記録しているブログです。堅苦しい話が苦手な人には雑想カテゴリーの記事がおすすめです。

2016-01-01から1年間の記事一覧

『秒速5センチメートル』と『君の名は。』を隔てるもの

12月末なのに『君の名は。』は満席だった ぼくの同僚である鈴木智之先生からご恵投いただいた『顔の剥奪』(青弓社、2016年)という著作を読んでいたら、急に映画『君の名は。』をもう一度見たくなった。9月に一度見ただけなので、このエントリを書くにあた…

『何者』が描く「メタ目線王決定戦」

以下は、朝井リョウの小説『何者』に関する文章であり、物語の核心に触れています。なので、小説や映画を未読、未視聴の方で、ネタバレは困るという方は読まないようにして下さい。 昨日、ツイッターを見ていたら、劇場版の『何者』が熱く語られているのが目…

(書評)「プロパガンダ」史観の限界

素人が挑む「南京事件」 この八月、いわゆる「南京事件」を論じた二冊の書籍が出版された。 一冊は有馬哲夫『歴史問題の正解』(新潮新書)、もう一冊は清水潔『「南京事件」を調査せよ』(文藝春秋)だ。有馬は冷戦期プロパガンダ研究などで有名なメディア…

犯罪と社会構造

容疑者は「特殊な人間」か 相模原の障害者施設で陰惨な事件が起きた。 事件そのものについてはまだ解明が始まったばかりなので、特に書くことはないし、書くべきでもないだろう。ここで取り上げたいのは、事件についての<語り>である。 まず紹介したいのは…

大学生はなぜ勉強したほうがよいのか

社会学部の同僚である藤代先生が大学1年生に向けて、大変に熱いエントリを書いておられる。gatonews.hatenablog.com 在学中も、そして卒業したあとも、学び続ければ就職や仕事で可能性が広がっていくというのは正論だろう。大企業にさえ入れば一生安泰なん…

美しさの落とし穴

今回はアニメの話から始めよう。 先日、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の第一期の放送が終了した。火星独立運動のシンボル的存在である少女と、彼女の護衛を請け負った少年少女たち(鉄華団)が強大な敵と戦いつつ、地球へと向かう物語である。少…

保育園不足問題は「超政治化」できるか?

anond.hatelabo.jp このエントリが話題である。 はてなの「アノニマス・ダイアリー」(通称、増田)のエントリがここまで話題になるというのは、長年のはてなユーザーからすればある種の感動を禁じ得ない。だって、あの増田ですよ?通勤途中にう○こ漏らした…

「意識高い系」はなぜ批判されるのか

こういうブログを読んだ。www.jimpei.net これに関するブックマークコメントを見ると、「意識高い系が批判されるのは、実力もないくせに他人を見下して馬鹿にするからだ」という趣旨のものが多い。要するに、「意識高い系」とされる人たちも、それを批判する…

「ダブルシンク」としてのミサイル報道

イギリス人作家、ジョージ・オーウェルの『1984年』は、全体主義国家による徹底した管理を描いたディストピア小説としてよく知られている。 この小説に登場する全体主義国家では、「ダブルシンク(二重思考)」と呼ばれる思想統制方法が用いられている。それ…