擬似環境の向こう側

(旧brighthelmerの日記) 学問や政治、コミュニケーションに関する思いつきを記録しているブログです。堅苦しい話が苦手な人には雑想カテゴリーの記事がおすすめです。

アカポスとしてのホグワーツ

 以下は、ハリー・ポッターについての文章である。なので、ハリポタに興味のない人が読んでもまったく面白くないであろうし、興味があってもたいして面白くないことは明言しておく。

 さて、問題はダンブルドア校長である。偉大な魔法使いとして名高いダンブルドア校長であるが、ことホグワーツ魔法魔術学校の運営に関しては、相当に問題を抱えていると言わざるをえない。

 例を挙げよう。最終巻ですっかり株を上げたセブルス・スネイプ。魔法薬学の教員である。ハリポタの記述に従う限り、彼の授業はパワハラ満載である。お気に入りの生徒には優しく、嫌いな生徒には極めてアンフェアな態度で接する。ダブルスタンダートも日常茶飯事。挙句の果ては、ハリーの父親に対する復讐心から、息子を恫喝するところまで行ってしまう。いくら複雑な事情があるからといって、こうした教員を放置しておくことにダンブルドア校長の管理責任が問われるのは必至である。

 次に注目したいのは、カスバート・ビンズ。魔法史の教員である。彼は幽霊であるが、自分が死んでいることに気づかないまま授業を行っているとも言われる。問題点は二つ。一つは彼の授業が極度につまらない点である。本当は血沸き肉踊るはずのゴブリンの反乱についてまで単調な解説で生徒に居眠りをさせてしまう。

 そして、より重要なもう一つの問題点は、死者にアカポスを預けておくことで、魔法史専攻の若手の雇用を奪っていることである。しかも、死者である以上、おそらくは賃金の支払いも発生していないだろうから、言わばホグワーツは永遠のサービス残業に依存しているのである。

 更なる問題は、闇の魔術に対する防衛術である。この授業は呪いによって教員が1年しかもたないという状況に陥っている。ダンブルドア校長はそのあたりの事情も熟知しているのだから、対処方法としては1年の任期制を導入し、自動的に教員が交代していくシステムを導入するべきである。それをしないまま、下手にパーマネントで雇用し続けようとするから、この授業の担当者は次々と悲惨な目に遭い、雇用継続が不可能になってしまうのである。

 占い学にも問題が多い。担当教員のシビル・トレローニーは、本人の自覚もないまま過去に凄い予言をしたという理由だけで雇用されている。他の教員も認めているように、占い学の教員としては全くもって不適任である。言わば、過去に1回だけスーパープレーをしたことがあるという理由で、トレーナーとしての適性も見ないままに野球のコーチを招き入れている状態なのである。

 セキュリティ上の問題から、トレローニーをホグワーツの外に出すわけにはいかないという理由があるのであれば、別の口実でもって彼女を引き止めておけば良いだけの話である。生徒をそこに巻き込んではならない。

 また、マダム・フーチは飛行術の教員ということであるが、彼女が授業をしている様子は作中わずか1回しか描かれておらず(しかも、ネビルが怪我をしたためにすぐに終わった)、それ以外ではクイディッチの審判しかしていない。飛行術の授業がそんなにも少ないのであれば、臨時教員としてクイディッチの選手でも連れてくるべきではないだろうか。

 そして、ホグワーツの雇用問題において、筆者がもっとも問題が大きいと考えているのが、ウィルヘルミーナ・グラブリー=プランクの処遇である。彼女以上に、ホグワーツにおける雇用の歪みの犠牲になっている存在はいないと言ってよい。

 彼女は、魔法生物飼育学の代用教員である。この授業の専任教員はルビウス・ハグリッドであるが、彼がいろいろな事情で授業ができなくなったときに急遽駆りだされ、彼が戻ってきたらすんなりとお役御免なのである。

 ホグワーツの一方的な都合によっていつでも呼び出せるということは、普段の彼女は専任非常勤かPDのいずれかであろう。常勤の口を探しているのだ。しかも、教員としての彼女は、明らかにハグリットよりも優れている。それなのに、この処遇はないだろう。

 そもそも、魔法生物飼育学の教員としてハグリッドを採用したこと自体が明らかに情実人事である。彼には校地の管理という仕事が既にあり、金銭に不自由している様子もないのだから、無理に教員として兼任させる必要はない。

 にもかかわらず、前任者が退任したことをもって、スカウト人事でハグリッドを採用してしまった。もし適正な公募をしていれば、グラブリー=プランクかそれ以外の人物が採用された可能性はきわめて高い。

 以上の論拠をもって、ダンブルドア校長の学校運営にはきわめて問題が多いと考えざるをえないのである。考えたところで何も良いことはないのだが。