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擬似環境の向こう側

(旧brighthelmerの日記) 学問や政治、コミュニケーションに関する思いつきを記録しているブログです。堅苦しい話が苦手な人には雑想カテゴリーの記事がおすすめです。

スマホとどう付き合うか

ぼくはネットが好きだ。 ネットで話題になっている文章にはだいたい目を通すし、ネットで誰かが喧嘩をしていればそれをいそいそと見物に行く。ぼくはメディアの研究者ということになっているので(専門はマスメディアだけど)、いちおうはフィールドワーク?…

『リベラル・ナショナリズムと多文化主義』紹介

以前、このブログで「リベラル・ナショナリズム」について取り上げたことがある(参照)。矛盾する思想と見なされることの多いリベラリズムとナショナリズムとを組み合わせ、それを肯定しようとする立場の議論だ。 このリベラル・ナショナリズムの思想をより…

「リベラル」って誰のこと?

ネットではよく「戦後リベラルは…」といった物言いを目にする。そこで言及される「戦後リベラル」というのは大抵頭の悪そうな主張をしていて、柔軟性に欠ける一方、平気でダブルスタンダードを行使する卑劣な輩であったりする。 こういう物言いが気になるの…

領域侵犯のモラル

著名な社会学者である大澤真幸さんの文章が、多くの人によって批判されている。 大澤さんがどれぐらい有名な社会学者かと言えば、人気アニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』でその言葉が登場人物に引用されるほどなのである。これを書きながら、ぼくの論…

研究者にとっての運、または偶然の出会いについて

佐々木倫子さんのマンガ『動物のお医者さん』には、菱沼さんという女性が登場する。 手元にないので記憶に頼って書くが、彼女は実用的な細菌を発見するのに長けており、発見が商品化されたこともあるのだという。そのために彼女をライバル視する大学院生もい…

分析概念の暴力

ぼくが嫌いな言葉の一つに「御用学者」がある。 言うまでもなく、震災後に急速に使われるようになった言葉だ。その意味は、電力会社から研究費を受け取っているがゆえに原発の安全性ばかりを言い立てる研究者ということになるだろう。 もっとも、実際の用途…

マイルドヤンキーの近代化

1950年代から60年代にかけて、米国の社会科学では近代化論なるものが隆盛を誇っていた。 当時、植民地支配から次々と独立を遂げていった国々をいかにすれば欧米のような近代国家へと成長させることができるのかが近代化論のテーマだった。もちろん、その背後…

分析の封殺

再帰的な被告人 えらい文章を読んでしまった。『黒子のバスケ』脅迫事件の被告人意見陳述である。ネットで話題になったので、読んだ人も多いだろう。「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人意見陳述全文公開 「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人意見陳述全文公開2 …

本棚に圧倒される

さすがに大都市だけあって、ロンドンには書店がたくさんある。 今日はいつもと違うルートで大学図書館に向かって歩いていると、大きな書店に出くわした。さっそくなかに入り、ぼくの専門分野の本が置かれている階まで上がる。最上階の人気のあまりないエリア…

『反コミュニケーション』

藤子・F・不二雄の短編マンガに「テレパ椎」という作品がある。 記憶に頼って書くと、この作品の主人公は「それを持っていると他人が何を考えているのかが全てわかる木の実」を拾う。そのため、他人が遠慮して言わないものの心のなかで考えていることが読め…

ミルズとラザースフェルド

チャールズ・ライト・ミルズという社会学者がいた。彼が書いた『社会学的想像力』という著作は、国際社会学会の会員たちが選んだ「20世紀の重要な社会学の著作」の第2位にランクインされるほどよく知られている。 他方で、ポール・ラザースフェルドという社…

社会のため息

以前、さる研究会に出ていたときの話。その研究会はわりと高齢の「左」系の人で構成されていた。研究会のテーマも自ずとそっちの方向に行くのだが、それよりも気になったのが、結論がしばしば「新自由主義が悪い」「米国が悪い」というところに落ち着いてし…

今年を振り返る

さて、今年もいよいよ終わりである。 去年から始めたこのブログ。去年の投稿数が9本だったのに対して、今年はこれまでで86本。なんでこんなことになったのかと言えば、在外研究に出たおかげで時間的に余裕ができたからでもある。なので、帰国したらこうはい…

物語は人を追い詰めるのか

『おおかみこどもの雨と雪』をめぐって いきなりで恐縮なのだが、『おおかみこどもの雨と雪』の話だ。何でも12月20日に日テレで放送されるらしい。 この映画が劇場で上映されたさい、以下のブログのエントリが話題になったことがあった。コメント欄を見ても…

ハーフ・アフェー・デイ

今日、イギリスでのぼくの受け入れ先の大学に行ってきた。ハーフ・アフェー・デーなる教員の会合があるというので、顔を出そうと思ったのだ。 「受け入れ先」と言っても、完全に放置されている状態なので、他の教員と顔を合わせるのは実質的に今日が初めてで…

教室という場所

ぼくは自分で勉強ができない高校生だった。 自室で勉強していても、10分から15分で限界がくる。気がつけばマンガを読み始め、テレビを見て、ゲームをしてしまう。意志の力で耐えようとしても、すぐに限界がきてしまう。 そういうしているうちに大学受験のシ…

消費税増税は「マスコミのせい」か?

マスコミによる消費税増税キャンペーン? 少し時期を逸したが、消費税の増税が安倍首相によって正式に表明された。 これを受けて、どういう理路なのかはいまいち定かではないのだが、増税に反対する人たちから「マスコミが悪い」という声が上がっている。ど…

領域横断的研究の憂鬱

ツイッターで書こうと思ったのだが、長くなってきたのでブログで書くことにする。 ぼくがまだ駆け出しの研究者だったころ、ある先生が次のようなことを言っていた。 「研究者(執筆家)には、新しいアイデアをぽんぽん出していくタイプと、既存の発想とその…

二つの自己責任論(追記あり)

日本では自動車に乗るさい、シートベルトの着用を義務づけられている。近年では後部座席に座るさいにも義務づけられるようになった。 考え方によっては、これは非常にお節介な話である。シートベルトをするかしないかというのは基本的に個人の選択の問題であ…

経済学の常識?

(過去のツイートに加筆) ネットでは、ときどき「経済学の常識」や「経済学では常識」という表現を見かける。面白いと思うのが、まったく正反対の主張を正当化するさいにこの「常識」が持ち出されることだ。一例を挙げよう。 一例をあげると、財政赤字の解…

脱線する読書

ある研究者のブログを読んでいたときのことだ。 そのブログ主は1日2、3冊という猛烈なスピードで読書記録をアップしているのだが、ある時、そこで「1年に50冊しか本を読めない研究者」のことが批判されていた。要するに「少なすぎる」というわけだ。「私は1…

ショートメールと比較優位

昨日の『メトロ』(ロンドンの地下鉄の駅で無料配布されている新聞)で、ショートメールによる解雇通知に関する記事が載っていた。何の前触れもなく、ショートメール一本で職場にもう来なくていいと言われるという話らしい。 雇用者側としては、解雇の通知は…

最大多数の最大幸福?

「最大多数の最大幸福」という言葉を初めて聞いたのは、高校生のときだったと思う。功利主義なる考え方を簡潔に示すとされるこの言葉、おそらくは世界史か何かの授業で耳にしたのだろう。でも、その言葉が何を言わんとしているのかがいまいち理解できなかっ…

「学問のひと」と政治(追記あり)

学問は「私が一番正しい」ことを明らかにする 世の中には、同じ領域であってもまったく見解が異なる学問的立場というものが存在する。経済学は素人なので、確たることは言えないのだが、いわゆる近代経済学とマルクス主義経済学というのがそれに該当するので…

隅っこの、隅っこの、そのまた隅っこの研究

先日、このようなツイートがRTされてきた。https://twitter.com/akiradicalism/status/357622954697297920 これは小坂井敏晶 『社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』(筑摩選書)からの引用のようだ。本来なら原著から直接に引用すべきな…

尾崎豊と疎外論の復権?(2)

さて、前回のエントリの続きである。 前回のおさらい 前回は、疎外論の影響を受けた管理社会論と尾崎豊の歌との共通点について書いた。 現代社会の仕組みは人間が作り上げたものなのに、あたかも自然なもの、所与のものであるかのような錯覚のもと、人びとは…

尾崎豊と疎外論の復権?(1)

尾崎豊はどうやって「仕組まれた自由」に気づいたのか ネット界隈では尾崎豊の評判は良くない。当たり前だろうとは思う。「♪盗んだバイクで走りだす」と聞かされれば盗まれた側に同情し、「♪夜の校舎 窓ガラス壊して回った~」と聞かされれば「なんと迷惑な……

モラル・パニック批判の「危うさ」(2)

さて、前回の続きである。今回はえらく抽象的な話だ。 以前のエントリでも書いたように、モラル・パニックとは、実際にはそれほど重要ではないとされる出来事に関して、マスメディアが大騒ぎし、そこに専門家や政治家が介入して社会問題になってしまうという…

モラル・パニック批判の「危うさ」(1)

この過疎ブログにしては「『若者バッシング批判』の陥穽」にはわりと多くのアクセスが集まり、批判的なコメントもついた。せっかくの機会なので、前のテーマからはかなりズレるのだが、モラル・パニック批判についてもう少し書いてみたい。といっても、以前…

「若者バッシング批判」の陥穽

大学時代の同期と一緒に飲んだりすると、そろそろ「あれ」を聞くようになってきた。そう、若手社員に対する愚痴だ。 「近頃の若いやつには働くという意識が乏しいんじゃないか?」とかいう話を聞くと、「ああ、ぼくも歳を取ったんだなぁ」などとつくづく思う…

『ワンピース』から考える正しさの源泉

ルフィの「正しさ」はどこから来るのか 以前のエントリでも参照したことがあるのだが、『ワンピース』という漫画は「正しさ」とは何かを考えるうえで、なかなか良い出発点になる。いまは海外にいるし手元にないので、記憶に頼って書くが、まあこんな感じだ。…

相対主義へのフリーライド

2年ぐらい前、「男はこの4コマ漫画における女の子の心情に気づくことができないと失格らしい」という話題がネットで盛り上がったことがあった。 このマンガについて、ぼくは「女の子は自分の女子力に自信がなくて日傘なぞさしてみたが、男の子は女子力云々…

自己決定という自己欺瞞

学生の人生までは背負えない 仕事柄、ぼくは学生と面談することが結構ある。学生の進路についても話を聞くことが多い。そして、少なからぬ学生が将来の悩みを抱えていることを知る。親の希望と自分の希望のズレ。実現可能性が低い自分の夢と食べていかねばな…

日本版リベラル・コミュニタリアン論争

自民党の憲法草案をめぐって、同党の内部でも異論があるようだ。詳しくはこちら。 憲法に「家族の助け合い」を入れるべきか?自民党改憲草案に河野太郎議員が反論 憲法をめぐっては、9条や96条などの様々な争点が存在するが、ここでは少し違った角度から…

マイノリティを「代弁」すること

このまとめ(『彼女たちの売春(ワリキリ)』(荻上チキ著)への違和感)を読んだ。 ぼくは『彼女たちの売春(ワリキリ)』は良い本だと思ったが、やはりこういう感想を持つ人たちもいるんだな、というのが正直なところだ。そこで、ここでは以前からぼくが悩…

なぜ剽窃は起きるのか

(以前のツイートのサルベージ) 論文の剽窃というのは、研究者としてもっともやってはいけない行為だ。見つかれば職を失う。それにしても、なぜ剽窃などしてしまうのだろうか。普通の研究者であれば、剽窃にならない引用の仕方など習得しているはずだ。 と…

捏造された「無関心」

浦沢直樹/画・勝鹿北星/作のマンガ『MASTERキートン』に、「無関心な死体」というエピソードがある(以下、ネタバレ)。 冒頭、一人の青年がロンドンの路上で死亡する。この件を取り上げた女性ニュースキャスターは、青年が不良グループに襲われて頭を強打…

ガッサン・ハージ『希望の分配メカニズム』

ガッサン・ハージ、塩原良和訳(2003=2008)『希望の分配メカニズム パラノイア・ナショナリズム批判』(お茶の水書房)という本を読んでいる。基本的にはオーストラリア社会についての分析なのだが、読んでいると今の日本社会の状況との類似に驚く。以下で…

業績/責任のありか その2

前回は「社会のおかげ」と「本人のおかげ」のバランスをとることが難しいという話をした。でも、それは何故なんだろう?それを語るために、唐突に話を変えてみる。 世の中には様々な問題がある。政治家や官僚はなぜそんな問題が起きるのか、どうやったらそれ…

業績/責任のありか その1

今から20年近く前の話。その日、僕は成人式に出席するため、地元に戻っていた。成人式自体は可もなく不可もなく終わり、中学時代の知人と会場の外に出た。 会場の外には再会を懐かしむ声の渦。僕も旧交を温めていたが、なかには楽しくない再会もある。昔か…