擬似環境の向こう側

(旧brighthelmerの日記) 学問や政治、コミュニケーションに関する思いつきを記録しているブログです。堅苦しい話が苦手な人には雑想カテゴリーの記事がおすすめです。

学問

『ワンピース』から考える正しさの源泉

ルフィの「正しさ」はどこから来るのか 以前のエントリでも参照したことがあるのだが、『ワンピース』という漫画は「正しさ」とは何かを考えるうえで、なかなか良い出発点になる。いまは海外にいるし手元にないので、記憶に頼って書くが、まあこんな感じだ。…

相対主義へのフリーライド

2年ぐらい前、「男はこの4コマ漫画における女の子の心情に気づくことができないと失格らしい」という話題がネットで盛り上がったことがあった。 このマンガについて、ぼくは「女の子は自分の女子力に自信がなくて日傘なぞさしてみたが、男の子は女子力云々…

自己決定という自己欺瞞

学生の人生までは背負えない 仕事柄、ぼくは学生と面談することが結構ある。学生の進路についても話を聞くことが多い。そして、少なからぬ学生が将来の悩みを抱えていることを知る。親の希望と自分の希望のズレ。実現可能性が低い自分の夢と食べていかねばな…

日本版リベラル・コミュニタリアン論争

自民党の憲法草案をめぐって、同党の内部でも異論があるようだ。詳しくはこちら。 憲法に「家族の助け合い」を入れるべきか?自民党改憲草案に河野太郎議員が反論 憲法をめぐっては、9条や96条などの様々な争点が存在するが、ここでは少し違った角度から…

マイノリティを「代弁」すること

このまとめ(『彼女たちの売春(ワリキリ)』(荻上チキ著)への違和感)を読んだ。 ぼくは『彼女たちの売春(ワリキリ)』は良い本だと思ったが、やはりこういう感想を持つ人たちもいるんだな、というのが正直なところだ。そこで、ここでは以前からぼくが悩…

なぜ剽窃は起きるのか

(以前のツイートのサルベージ) 論文の剽窃というのは、研究者としてもっともやってはいけない行為だ。見つかれば職を失う。それにしても、なぜ剽窃などしてしまうのだろうか。普通の研究者であれば、剽窃にならない引用の仕方など習得しているはずだ。 と…

捏造された「無関心」

浦沢直樹/画・勝鹿北星/作のマンガ『MASTERキートン』に、「無関心な死体」というエピソードがある(以下、ネタバレ)。 冒頭、一人の青年がロンドンの路上で死亡する。この件を取り上げた女性ニュースキャスターは、青年が不良グループに襲われて頭を強打…

ガッサン・ハージ『希望の分配メカニズム』

ガッサン・ハージ、塩原良和訳(2003=2008)『希望の分配メカニズム パラノイア・ナショナリズム批判』(お茶の水書房)という本を読んでいる。基本的にはオーストラリア社会についての分析なのだが、読んでいると今の日本社会の状況との類似に驚く。以下で…

業績/責任のありか その2

前回は「社会のおかげ」と「本人のおかげ」のバランスをとることが難しいという話をした。でも、それは何故なんだろう?それを語るために、唐突に話を変えてみる。 世の中には様々な問題がある。政治家や官僚はなぜそんな問題が起きるのか、どうやったらそれ…

業績/責任のありか その1

今から20年近く前の話。その日、僕は成人式に出席するため、地元に戻っていた。成人式自体は可もなく不可もなく終わり、中学時代の知人と会場の外に出た。 会場の外には再会を懐かしむ声の渦。僕も旧交を温めていたが、なかには楽しくない再会もある。昔か…