擬似環境の向こう側

(旧brighthelmerの日記) 学問や政治、コミュニケーションに関する思いつきを記録しているブログです。堅苦しい話が苦手な人には雑想カテゴリーの記事がおすすめです。

政治家と有権者とメディアの不幸な関係

政治家は自分ことしか考えてない? 批評家の東浩紀氏が今度の選挙で「積極的棄権」を呼びかけたということが話題を呼んでいる。 この呼びかけに対しては多くの批判がなされており、いまさらぼくが言うべきことは特にない。特にないのだが、東氏の問題意識に…

ファンの心理、アンチの心理

これを読んでいる方に想像してもらいたい。 みなさんが大好きな誰か、できれば努力家が良いのだけれども、その誰かが学業や仕事で成功したという話を耳にしたとしよう。その時、どんな感想を抱くだろうか? 「ああ、アイツ、頑張ってたもんな」「努力の成果…

弱者男性問題について考える

ここ数年来、ネットでよく目にするのが「キモくてカネのないおっさん」にまつわる問題である*1。 ぼくなりに解釈すれば、「女性であること」や「外国籍であること」にまつわる問題はマスメディアやネットでもさかんに論じられる一方、外見や所得、性的パート…

性犯罪をあえて語らないこと

性犯罪というのは語ることが難しいテーマだとつくづく思う。 さまざまな価値観がぶつかるがゆえに、どのように論じようとも批判を招き寄せてしまう。加えて、そこに政治的な問題がリンクすれば、なおさらである。 ということで、このエントリで取り上げたい…

イエスの方舟事件から見る「出会い系バー」報道

読売新聞の「出会い系バー」報道 加計学園の獣医学部設置認可をめぐる疑惑に関連して、前川喜平・前文部科学事務次官の言動がメディアの注目を集めている。 ここでは獣医学部の件は措いて、同氏の「出会い系バー」をめぐる報道について述べておきたい。もち…

悲劇がもたらす命

そろそろDVDも発売になるということで、さすがに『君の名は。』のネタバレをしても許されるだろう。ということで、以下では物語の核心に迫るネタバレがあります。--- 『君の名は。』では、隕石の落下によって巨大な悲劇が発生する。で、なんやかんやあっ…

偽物の愛国心?

ジョンソンによる警句の背景 先日のエントリについて、サミュエル・ジョンソンに関する説明が足りないのではないか、という指摘を受けた。そこで補足を…と思ったのだが、残念ながらぼくは18世紀の英国について専門的に研究しているわけではない。 そこで手抜…

「愛国教育」の行き着くところ

愛国的な教育を標榜する小学校が大きな話題になっている。 森友学園による元国有地の取得価格が安すぎるのではないかという疑惑に端を発して、さまざまな問題が語られている。言うまでもなく、国有地の取得過程や同学園の教育内容に関して、語りうる資格をぼ…

拙著『ナショナリズムとマスメディア』について

これは「ステマ」ではない 「ステマ」という言葉は、消費者のフリをして特定の商品やサービスの購入に他の消費者を誘導することを指す。以下の文章は、本を買って欲しい、あるいはせめて最寄りの図書館にリクエストを出して欲しいという著者の切なる願いの反…

マスコミュニケーション論で語る「桃太郎」

今を遡ること数年前、「桃の鬼退治」が世間の注目を集めるという出来事があった。 以下は、一人のマスコミュニケーション研究者として、それを記録しておかねばならないという義務感によって書かれた文章である。ただし、多くの部分を知人からの伝聞情報に依…

「ポスト事実」の時代をいかに越えるか

「ポスト真実」は使いづらい 今年も残りわずか…と書こうと思っていたら、年が明けていた。 ということで、2017年最初のエントリは流行語ともなった「ポスト真実(post-truth)」について考えたい。 正直に言えば、「ポスト真実」というのは使いづらい言葉だ…

『秒速5センチメートル』と『君の名は。』を隔てるもの

12月末なのに『君の名は。』は満席だった ぼくの同僚である鈴木智之先生からご恵投いただいた『顔の剥奪』(青弓社、2016年)という著作を読んでいたら、急に映画『君の名は。』をもう一度見たくなった。9月に一度見ただけなので、このエントリを書くにあた…

『何者』が描く「メタ目線王決定戦」

以下は、朝井リョウの小説『何者』に関する文章であり、物語の核心に触れています。なので、小説や映画を未読、未視聴の方で、ネタバレは困るという方は読まないようにして下さい。 昨日、ツイッターを見ていたら、劇場版の『何者』が熱く語られているのが目…

(書評)「プロパガンダ」史観の限界

素人が挑む「南京事件」 この八月、いわゆる「南京事件」を論じた二冊の書籍が出版された。 一冊は有馬哲夫『歴史問題の正解』(新潮新書)、もう一冊は清水潔『「南京事件」を調査せよ』(文藝春秋)だ。有馬は冷戦期プロパガンダ研究などで有名なメディア…

犯罪と社会構造

容疑者は「特殊な人間」か 相模原の障害者施設で陰惨な事件が起きた。 事件そのものについてはまだ解明が始まったばかりなので、特に書くことはないし、書くべきでもないだろう。ここで取り上げたいのは、事件についての<語り>である。 まず紹介したいのは…

大学生はなぜ勉強したほうがよいのか

社会学部の同僚である藤代先生が大学1年生に向けて、大変に熱いエントリを書いておられる。gatonews.hatenablog.com 在学中も、そして卒業したあとも、学び続ければ就職や仕事で可能性が広がっていくというのは正論だろう。大企業にさえ入れば一生安泰なん…

美しさの落とし穴

今回はアニメの話から始めよう。 先日、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の第一期の放送が終了した。火星独立運動のシンボル的存在である少女と、彼女の護衛を請け負った少年少女たち(鉄華団)が強大な敵と戦いつつ、地球へと向かう物語である。少…

保育園不足問題は「超政治化」できるか?

anond.hatelabo.jp このエントリが話題である。 はてなの「アノニマス・ダイアリー」(通称、増田)のエントリがここまで話題になるというのは、長年のはてなユーザーからすればある種の感動を禁じ得ない。だって、あの増田ですよ?通勤途中にう○こ漏らした…

「意識高い系」はなぜ批判されるのか

こういうブログを読んだ。www.jimpei.net これに関するブックマークコメントを見ると、「意識高い系が批判されるのは、実力もないくせに他人を見下して馬鹿にするからだ」という趣旨のものが多い。要するに、「意識高い系」とされる人たちも、それを批判する…

「ダブルシンク」としてのミサイル報道

イギリス人作家、ジョージ・オーウェルの『1984年』は、全体主義国家による徹底した管理を描いたディストピア小説としてよく知られている。 この小説に登場する全体主義国家では、「ダブルシンク(二重思考)」と呼ばれる思想統制方法が用いられている。それ…

ぼくの良識

自分で言うのも何なのだが、ネット上でのぼくはわりと良識的なのではないかと思う。 ツイッターやブログでも攻撃的だったり差別的だったりすることはなるべく書かないようにしているし、ぼくが書いたものを読んで傷つく人がいなければいいなとも思っている。…

「命の軽さ」が与えてくれるもの

ずっと以前、「人口の多い中国では、命の重さが日本とは違う」という趣旨の文章を読んだことがある。いまでもネットで検索すれば、そういう文章をすぐに見つけることができる。 しかし、本当にそうなのだろうか、とも思う。子どもを喪った中国人の父母は「じ…

ヒロインはなぜ清楚系か

(ツイートのまとめ) 実家に帰省中、奥さんが本を持ってくるのを忘れたので、ぼくが持っていた小説を貸した。すると、次のような質問がやってきた。 「どうして貴方が愛読する小説の主人公はいつもうじうじ苦悩していて、ヒロインは決まって黒髪の清楚系で…

「政治の季節」の過ごし方【追記あり】

【注】趣旨がうまく伝わっていない箇所と誤った箇所とがあったため、追記しました(2015/8/7) 「事実」による印象操作 『朝日新聞』の富永格特別編集委員のツイートが炎上した。NHKなどのメディアでも報道され、富永氏はツイートを削除している。 朝日新聞…

安保法制について

以下は、安全保障論にも憲法論にも全く素人の戯言である。 現政権は安保法制がどうしても必要だという。 その理由はいまいち明快に語られないのだが、おそらくは中国の領海拡張路線に対する強い警戒感があるのだろうと思う。しかし、それを国会などの場で明…

人生の選択

森見登美彦さんの『四畳半神話大系』をひさびさに再読した。 主人公の大学生が入学直後にどのような人間関係に身を置くかでその後のキャンパスライフに生じる違いを描いた作品だ。ううむ、この説明だとこの作品を実際に読んだ人にしか伝わらないかもしれない…

憐れみが人を殺すとき

どうにも整理のつかない話というものがある。 先日、ネットを見ていると、高齢の男性が長年連れ添った伴侶を殺害したという事件の記事がアクセスを集めていた。少し長いが、記事を引用してみたい。 93歳の夫が体の痛みを訴えていた妻に頼まれて殺害したと…

根拠なき自信も悪くない

根拠のない自信を持っているひとはバカにされやすい。 典型的なのは、いわゆる「意識高い系」だ。仕事ができないくせになぜか根拠のない自信だけはあり、周囲に多大な迷惑をかけまくる、というのが典型的な意識高い系のイメージではないかと思う。普段は大口…

大阪を蝕むシニシズム

「既得権」をめぐる報道 時期を逸してしまったが、大阪都構想に関する話だ。 といっても、都構想の賛否について論じたいわけではない。その賛否に関する報道や文章にはそれなりに目を通しているものの、賛成や反対を明確に論じられるほどの知識があるわけで…

努力を「語る」流儀

学歴の話はなぜ荒れるのか 学歴というのはとても荒れやすいテーマだ。 ほとんどの人が学校教育を経て成人する現代社会において、それはやむを得ない部分もある。それぞれに様々な経験があり、それらから導き出された何かしらの考えがある。自分と違う意見を…